受賞歴
第22回日本自費出版文化賞
小説部門賞 受賞作品
1)
自分が生きてきて、見たこと、聞いたこと、思ったこと、したことを、何らかの形にしたい欲求は誰にも起こる。それは〈自分〉という存在を再確認する作業に他ならない。自費出版は、最も身近で目に見える手段だった。
2)
自分の本が書店に並び、人の手に触れるのは叶わぬ夢だと思っていた。行きつけの書店で〈自費出版〉の文字を見つけたとき、天啓のようにその距離が縮まった。本は、大手出版社だけのものではない。あとは書くだけだ。
3)
本に命があるとしたら、読まれない本は悲しい。一度も開かれない本は、存在しないのと同じだ。自費出版であっても、人に読んでもらえるように丁寧に作りたい。自分の価値観が成長したときに愛し続けられる良い本を。
4)
ぼくはこの本を書いたことで、得たものがたくさんあります。
自費出版だからといって、自分の思い込みだけで書いてはだれにも読んでもらえません。せっかく作った本が死んでしまいます。
小説の場面が読み手の頭の中で素直に映像となるために、うそや飛躍がないように、何度も書き直しました。言葉遣いの癖や文字表記について直したり、一度直したものを戻したり、担当の方がうんざりするほど校正を繰り返しました。
そうしてようやく出来上がった本は、ぼくの愛情と人生がこもった一冊となり、スタッフのみなさんも一緒に喜んでくださいました。幸いにも日本自費出版文化賞で小説部門賞をいたただきました。懐かしい方から「読んだよ」と声をかけられ、さまざまな新しい人間関係も生まれています。